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5.皮膚病を切る

5.皮膚病を切る: 分類/皮膚疾患の無限大

院長出る幕じゃございませんがプリオン病はうつるのでしょうか? 噂を聞いて早二十年、それらしい話題が栄え十五年。 未だ皮膚科領域には、プリオン病は発見されていません。
古来「えんがちょ」と申します。 医学は縁切り行為に、隠然たる根拠を与えてきました。 予防は大切ですが結局は運、です。 切り過ぎる不幸を思えば腐れ縁もまた良いかもよ。

●原因に基づく分類: 
 真菌・細菌・ウイルス・プリオン・化学物質・外力・温度・光線、、、

(中略)

●遺伝に基づく分類; 
 常染優性・常染劣性・伴性劣性、 
  染色体異常:欠失・逆位・重複・転座・倍数・異数、 
  遺伝子変異:ポイント・ミスセンス・ナンセンス・フレームシフト、、 

遺伝というと親の因果が子に報い、といった負の印象を抱きがちでしょうか。
  でも遺伝子という生物化学物質自体は、もっと中立的ななにか、なのだと思います。 それと同時に、医というなりわい自体本来は中立的だし、そうあり続けたいものです。
病気の原因遺伝子を特定しようというのは、最近の医学のひとつの流れです。
  皮膚科の病気なら色素性乾皮症が有名です。その研究は確実に進歩に繋がりました。

しかしそれが「遺伝が原因」にまで行ってしまうと、何か違うようにも感じるのです。
  現状では遺伝子が何をしてるかさえも、理解に微妙な部分があります。おそらくは、何かをひとつ特定できたら、それで全て判った、というほど病気は甘くないのでしょ。

遺伝子は単に子孫に伝えられる情報という以上に、生物の本質に関わっていそうです。
  そしてその物質自体に、思いもよらないほどの柔軟性や可塑性もあるらしいです。 そもそも遺伝子の変異こそが、生物の「進化」の本態だとも言われているものですし。

病気を「何かのせい」にしたくなるのは人情だし、治療に繋がるので大切なことです。
  しかし病気の真の原因はそう簡単でもなさそうなので、思い詰めると体に毒です。

だからとりあえず、水虫なら「真菌」という悪者がいるからやっつけてみよう、という原因志向の感染症の治療と、
一方で蕁麻疹なら「ヒスタミン」という物質が痒みのもとらしいから抑えてみよう、という機構志向の対症療法と、
どちらも素晴らしく良く効く(ことが多い)のですが。 蕁麻疹の真の原因は不明ですし、水虫のほうも、菌がくっついてもうつらない人もいるので真の原因は何でしょうか。

だからこそ、最先端にこだわらない虚心坦懐なる観察と分類、を皮膚科は重視します。

病気の真の原因 Why が判らなくても、何がどう How なってるのかまず知りたいです。
  病気の機構(メカニズム)が判ることが、まず最初の大きな一歩=進歩なのです。
進歩は続けたいものですが、科学技術において進歩は絶対善の同義語ではありません。
  知らないほう良かったとか。そういう多面性にも常に留意していきたいものです。

「皮膚科医の思念は無限大」 ── 見た目を超えた真の形を追い続けたいものです。

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